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「シリアスゲームを体験しよう!」勉強会記録

1 実施日時

日時:2011年8月20日(土)14:00~17:30
場所:ERIC事務所
参加:田中、高柳、つのだ(以上ERIC)、上村、杉野、江間、上田(以上CSIJ)

2 開催の目的

シリアスゲームとは、デジタル技術をつかった、社会問題(学習・医療・福祉や環境など)の学習や啓発を目的としたゲームをいいますが、今回はERIC(国際理解教育センター)のリスク連続学習会、日立環境財団助成プロジェクトの活動として「クロスロード」を体験し、今回の震災等をテーマとした「クロスロード」開発可能性の追求をしたいということと、CSIJ(市民科学研究室)の科学技術コミュニケーションツール研究会が開発したゲーム「ネゴシエート・キラー」を科学技術コミュニケーションツール研究会メンバー以外にトライアルして改善課題を探究するということを目的に会合を開催しました。

3 当日のプログラム

(0 大ナマジンゲーム体験)※
1 本日の趣旨説明(つのだ)14:00~
2 自己紹介「私が一番好きなゲームは・・・」14:05~
3 本日のスケジュール、ERICという場所の案内、コピー代14:25~
4 クロスロード体験(ゲームのやり方・ルールの説明、体験、ふりかえり、アンケート記入)15:30~
5 休憩 15:20~
6 ネゴシエート・キラー体験(アンケート記入、ゲームのやり方・ルールの説明、体験、ふりかえり、アンケート記入) 15:35~
7 あとかたづけ 17:20~17:30

※予定されていた参加者がそろうのを待つ間、家庭の防災アクションを確認できるスゴロク「大ナマジン」を実施しました。ERICには非常食は一部あるものの防災キットがないことが判明! 事務所の防災対策を考えるきっかけとなりました。

4 クロスロード体験記録(※クロスロードは市民編を体験)

(1)クロスロードとは
クロスロードは防災学習を目的としたカードゲーム。ただしいまは防災以外のテーマも広く開発されている。
 http://www.s-coop.net/rune/bousai/crossroad.html

(2)進め方
・参加者ひとりずつ自分のもっている問題カード(10枚)を一枚選んで読む。一度読まれたカードは読むことができない。
・カードで示された選択肢について、他の人の意見を予想して他の人はどう選択するのか判断してyesかnoのカードを出す(裏返してカードが出揃ったら表にする。1人だけ少数意見を出した人には金座布団チップをゲットできる。それ以外の人は青座布団のチップをもらう。少数意見が1人出なかった場合、多数意見の人のみ青座布団のチップをもらうことができる)
・カードを読むのは2巡で終わり。
・ひとつずつの課題の結果を見ながら意見を交換することもできるし、全体をふりかえって意見交換をすることもできる。

(4)今回の結果
1)読まれたカード番号.とyes、noの数(カードの詳細設定については省略)
1 5013(あなたは母親;わが子か目の前の人か?)yes5 no2
2 5020(ボランティア団体の代表:ボランティアを注意する?)yes3 no4
3 5016 (受験生:受験勉強を優先する?)yes4 no3
4 5004(市民:地震保険に加入する?)yes5 no2
5 5001(共働きの30歳代夫婦:それでも自治会に入る?)yes3 no4
6 5008(父親〔一般企業の課長〕:家族の安否が先?)yes7 no0
7 5019(被災者:宗教への勧誘に応じる?)yes0 no7
8 5009 (市民:ペットを一緒に避難所に連れて行く?)yes2 no5
9 5002 (主婦:残り湯をためておく?)yes5 no2
10 5007(川沿いの集落の住民:今すぐ避難をはじめる?)yes4 no3
11 5006(海辺の集落の自主防災組織リーダー:未避難の一家族を探しにも戻る?)
yes4 no3
12 5003(30代の夫婦:耐震金具を家具につける?)yes5 no2
13 5005(海辺の集落の住民:おばあさんを見に行く?)yes4 no3
14 5012(高齢者:マンションの耐震診断を受ける?)yes4 no3

2)青座布団・金座布団獲得数
(1)金座布団:誰も獲得できなかった
(2)青座布団(多い順):田中14、上田12、高柳12、杉野10、上村10、つのだ6、江間4

3)ふりかえりでの問いかけなど
*なぜ田中さんが一番多く獲得できたか?(田中さん以外に)→その意見を聞いて田中さんはどう思ったか?
*なぜ江間さんが一番少なかったか?(江間さん以外に)→その意見を聞いて江間さんはどう思ったか?
*どんな意見が一番意外だったか?
*yesかnoを出すのに一番迷った課題は何? それはなぜ?
*どんな問いがあったらいいか?
*他の人の意見を予測するという前提だったが、「自分の意見」であればYes/Noは変わったか? それはなぜか?
*そのほかどんなことを思ったか? それはなぜか?
*その他、ふりかえりで意見が出なかったが、解説書で推奨されているふりかえり(ルールを変える、yes/noそれぞれの問題点を考える、専門家がすすめる行動に対して「いやだ!」と言って理由を考えてみる等々)の紹介も行なった。

5 クロスロード感想シートより(5人から)

Ⅰ ゲームの中でのまわりの人の「決断」についての感想

(1)意外だった決断の出た課題と(2)その理由

・5006の課題(津波の危険)。防災担当者リーダの立場で一家族が見当たらない時、探しに戻るのか? 4対3で割れた。
・避難所にペットをつれていくかどうか。「ペットは除外」の原則はあり得ると思うが、避難所ごとに柔軟に判断できるところがたくさんあるように思う。避難生活のルール作りをする上でも良いきっかけになる。
・「家族より部下の安否を優先するという上司の判断」を問う課題。「仕事優先」ととらえる人が多かったのは、ちょっと違う。むしろ「仲間優先」というべきではないか、と思いました。
・なし
・無記入1人

Ⅱ 他の人の意見で「なるほど」と感心した、あるいはためになると思った意見

(1)どの問題か(2)具体的にどのような意見か

・5008、外国の人の意見をきいてみたい
・防災リーダーの役割を問うカード。「リーダーは現場を動いてはならない」という原則が重要であることを改めて知った。
・「宗教をすすめられたら信者になるかどうか」という問題があり不思議でした。話し合ってみて、(ゲームとしてはつまらないかもしれないが)「現実における問題だから取り上げた」ということがよくわかりました。
・無記入2人

Ⅲ クロスロードをやってみて楽しかったか

・楽しかった 4人
・どちらかといえば楽しかった 1人

Ⅳ その他

・バックグラウンドが様々な人たちとやってみると面白そう。
・話し合いができるところが良い。
・無記入3人

6 クロスロード実習会アンケート(5人から)

1 職業
・NGO/NPO関係 2人
・団体職員 1人
・会社員 1人
・無記入 1人

2 防災担当者かどうか
・担当者でない 5人

3 住んでいるところ
・東京 3人
・千葉 1人
・神奈川 1人

4 クロスロードの感想、改良点、問題点
・在日外国人関連のQuestion Cardが欲しい(例えば、3.11の際、横浜駅に避難した外国の方々が言葉がわからず、状況が把握できなくて困っていることがあった。駅員もパニクっていて英語やその他の言語で対応できていなかった)
・yes、noカードだけは「いじる」回数が多いので他のカードよりも丈夫に作ったほうがいいと思います。
・保険や耐震補強といったことはできればyes/noで判断をする前に簡単な説明があってもよかったのではないだろうか
・シンプルでわかりやすい
・ひとつ毎のカードで議論できていい
・自分のカードを増やすこともできそうだ→ゲームの拡張
・おもしろく予防として学べました。カードのすかし文字はもっとうすい方がいい。少々字が読みにくい
・災害の起こったところで性暴力が起こるので、そのことをいれたQがあって欲しい
・障害をもっている方(大人でも子どもでも)が避難することもあるので、そのことを入れたQがあって欲しい
・心のケアーについてのQがあって欲しい
・ボランティアの人が死体を見てしまったとか、ボランティアの人が別の何か被害にあってしまったとか・・・・・
・空白のカードがあって自分たちの仲間でやるにふさわしいのを書き込めるといい

5 日常の職務や業務、日常生活でのジレンマ
・実際に被害した際の水、食料、インフラ・・・・・・の深刻な問題もうまく組み込めればよいのではないか
・人を助けるか自分の安全を守るか
・自分が今しかできないことは何か、自分がずーっとできることは何か。今しかできないことで継続が必要なのにそれをしていいのか? 自分の満足か?
・無記入3人

7 ネゴシエート・キラー体験

市民科学研究室の「科学コミュニケーションツール研究会」が開発した、生活習慣病予防のための健康管理ゲーム。このゲーム開発は、次の助成を受けています。
http://www.fost.or.jp/

本体験は、別の助成金を受けた研究活動であるため、内容やふりかえりなどを紹介することができませんので、ゲームの概要や結果を紹介するにとどめておきます。

新入社員が日常の勤務状況、上司・顧客との関係、食生活、睡眠などの選択肢を選ぶと、3つの「キラー要素」(血圧、血糖値、コレステロール値)の数値が上がり、健康リスクが上昇するという設定。キラー要素3人、新入社員3人とわかれて、新入社員3人はいかに脱落しないで(死亡しないで)早くゴール(昇進)に達するかをスゴロクゲーム方式で競います。

時々に肥満など健康悪化の説明カードがあり、生活慣習病に関する健康知識を学習できるゲームとなっています。

当日は、キラー役が杉野、上村、つのだ、新入社員役が田中、高柳、上田、解説者江間という役割で進めましたが、いちはやく脱落したのは上田さんでした。高柳さんが退席されたあとを再び上田さんが引き継ぎましたが、はやくゴールに進みたいと「次のカードの内容を全面的に受け入れる」というコマでOKとしたとたん、あるキラー要素の上昇があり、またも脱落となりました。

キラー役としてこのゲームを体験したつのだの個人的な感触ですが、田中さん、高柳さんともしっかり生活を自己管理して、なかなか脱落しませんでした(時間内にゴールに達することもできませんでしたが)。職場での出世に必ずしも重きを置かない価値をもっている人だと迷わないという点もあるでしょうし、新入社員ですとまだ生活の自己管理を公私とも一貫できる人はいませんから(今の若い世代は逆に公私きっちり分けているという意見もありましたが)、大学生が実施してみるともっと現状を反映したトライアルになるかもしれません。
また、ゲームは実施するメンバーがいろいろな考えをもっているという気づきにつなげるツールになるばかりではなく、「遊び」であえて自分とは異なるいろいろな役割を演じることもできるので、ロールプレイの側面もあると感じました。また、「勝ち負け」のこだわると、開発者が意図しているテーマ学習になりにくいという面もあるので、「勝ち負け」ではない楽しみをいかに埋め込めるかが鍵かもしれません。

                                                  (文責:角田季美枝)
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by focusonrisk | 2011-09-15 23:02 | 勉強会・記録

大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 小林傳司教授

(特活)国際理解教育センター
日立環境財団プロジェクトチーム
聞き取り調査

実施日時 2011年8月8日(月)15:00~17:00
対象 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 小林傳司教授
聞き取り調査者 角田季美枝


1. 現在の日本社会におけるリスクコミュニケーションについて、何が課題だと思われますか。

・3.11以降、リスクコミュニケーションの研究や活動についてすでに多額のお金が流れています。これから「リスコミバブル」になることは明らかです。「絶対安心」のパブリック・アクセプタンスがだめになったから、今度はリスコミであると。リスコミの諸外国のツールには何があるという研究をするのでしょう。しかし、それは何のためのリスクコミュニケーションなのか、そもそもリスクとは何?という議論が抜けてしまい、ツールの開発に専心してしまう危険があります。それが一番の問題です。

・研究者が自分のリアルな感覚をもとに問題を考えない、現場のない研究者による研究がおこなわれていることも問題です。

・日本においては「実験する」というカルチャーが弱すぎます。「本物は西洋にある」と視察に行くだけで終わりか、「成功しないのは日本社会に問題がある」という知的植民地(とくに文系の学問)の状況もあります。

2. 特に3.11以降、活動への影響にはどのようなものがございますか?

・今まで以上に目に見えないものを見えない状況で考えていかなければなりません。専門家はこのような状況でどのように考えていくのかという講義や活動をしています。直近では8月5日、コミュニケーションデザイン・センターでは大阪大学創立80周年記念関連事業「知のジムナスティックス~学問の臨床、人間力の鍛錬とは何か~」を学生との共同企画により開催、多彩なゲストで実施しました。ゲストの中には学生が企画して登壇が実現した方もいます(※記録者注1)。開催直後なので、まだその評価はわかりません。

※記録者注1
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/(「お知らせ」の「2011年8月5日」)

3. 日本社会の状況に対して、貴団体・組織がめざす貢献は何ですか?

・大阪大学のコミュニケーションデザイン・センターは2005年4月に設立されました。このセンターの設立の背景には、阪大のミッション(社会が信頼できる専門家の育成)、副学長(当時)の鷲田清一さんの問題意識、とくに1990年代の日本社会におけるコミュニケーション機能不全症候群に対する問題意識、阪大での阪神・淡路大震災をふまえての「臨床哲学」の実践、さらに大学という文字情報に偏りすぎている場で文字以外の人間の表現を学ぶ場の必要性があります。私は2005年4月から着任しましたが、イギリスに留学していた1993年以降、私がやってきたこと(※記録者注2)と鷲田さんの実践がシンクロしていたのですね。このセンターは、日本の大学で初めて設立された、さまざまな領域の専門家と非専門家とのコミュニケーション推進、それを媒介するファシリテーター育成の恒常的機関で、大学院の教育・研究機関として位置づけられています(※記録者注3)。

※記録者注2
 科学技術に関する参加型テクノロジー・アセスメントのツールのひとつであるコンセンサス会議を日本で実践。詳細は小林傳司「これはそもそも学問なのか?という疑問は、外からも来るし、内側からも常に発生する」(鷲田清一監修『ドキュメント臨床哲学』大阪大学出版会、pp.132-143)、小林傳司『トランス・サイエンスの時代』(NTT出版、2007年)を参照。

※記録者注3
大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの3つのミッション
(1)人材育成:全学の大学院生を主たる対象に、コミュニケーション教育を通した高度教養教育を行います。そのために独自の教育プログラムを作り、問題解決に向けて議論する双方向型のコミュニケーションを担いうる人材を養成します。
(2)社学連携:社会生活に深くかかわる問題の解決には、専門的知識をもつ者も含む多様なひとびとが、当事者として話し合い、協働することが大切だと考えます。そのために学内外の組織と連携し、コミュニケーションの回路を提案・実践します。
(3)研究活動:コミュニケーションデザインをめぐって理系・文系の研究者やデザイナー・プロジェクトの創発の拠点として機能しています。その成果は論文だけでなく多岐に渡る媒体を通して表現します。
(出典)http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/ver2/about/mission.php

4. これまでの貴団体・組織の実践から、学んだこと、今後に活かしたいことは何ですか?

・2009年9月26日、WWViewsという試みを実施しました。これはWorld Wide Viewsといいまして、デンマークの技術評価局(DBT)が気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(2009年12月にデンマークのコペンハーゲンで開催)の前に、世界中の市民の意見を各国政府に届けようという目的で実施されたものです。日本では私に呼びかけがあり、私が実行委員長として大阪大学、上智大学が主催、北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニットが共催し、京都市で実施されました。全世界共通の手法(同日開催、同じ事前資料提供、同じ論点提示、同じ会議の手法)で実施されたのが特徴ですが、日本では参加する市民(105名)をマーケティング会社に選ぶ属性を提示し選んでもらいました(18歳以上、男女半々、人口統計をある程度反映した構成、地球温暖化問題のステークホルダーではないこと;記録者注4)。地球温暖化に関する専門家、NGO、NPO関係者を選ぶことはしなかったことに対して、NGO、NPO関係者からはなぜ自分たちを選ばないのかという声が届きました。「市民」とは何か、市民参加する「市民」は誰か、市民の声をどのように政治や政策につなげるかという課題がここにあります。市民の声を政治や政策に届ける専門家の養成が必要ではないかと思います。

・シティズンシップ、市民性の教育を提案していきたい。市民とは、具体的に自分の生活にひきつけて自分で考えて行動する人をいいます。そのような市民を育成することのできる専門家を育てる必要があります。

・このセンターの履修科目はすべて必修科目ではありません。学科横断的に履修できるようにしていますが、現在、学んでいる院生は約50人で、決して多いとはいえません。教員によっては、このセンターの科目を履修すより専門の研究や実験をちゃんとしろという人もいます。科学技術社会論(STS)では大学での就職先もないというのも現実です。

・阪大に限りませんが、全体的に大学生の質も低下しています。NPO、NGOがなぜNONという言葉で始まるのか理解しようとしない、また、ニュースを主体的に探したり見ることもない大学生が多いのです。新聞などでニュースを見ているのは40代以上ですね。若い人々が世界について知るための情報ルートと年長世代のそれとのギャップは大きい。今後、今の若い世代がどのような社会を創っていくのかを年長の世代が理解できるのかを考えると絶望的です。

・知的植民地である状況をどう変えていくことができるのか、自分で考えてこうしようという活動をしてそれを海外にもっていくような研究者、日本発の原案を提案できる研究者の養成を行いたい。しばらくはある種のエリート主義で行くしかないかなと感じているところです。

※記録者注4
WWViewsの詳細や結果は以下を参照のこと。
http://wwv-japan.net/

5. 今回わたしたちが開発しようとしている教材および人材育成プログラムについて、ご提案などございますか。

・3.11のあと、いろいろ読みましたが、ジョン・ダワーのインタビュー記事が印象に残っています。その中で、「個人の人生でもそうですが、国や社会の歴史においても、突然の事故や災害で、何が重要なことなのか気づく瞬間があります。すべてを新しい方法で、創造的な方法で考え直すことができるスペースが生まれるのです。関東大震災、敗戦といった歴史的瞬間は、こうしたスペースを広げました。そしていま、それが再び起きています。しかし、もたもたしているうちに、スペースはやがて閉じてしまうのです。」(「朝日新聞」2011年4月29日)と指摘していました。そのとおりで、3.11のあとあいたスペースも今、閉じられようとしています。しかし今回の大震災はとうてい閉じきれるものではありません。来年以降、いろいろ開発されたツールや経験が問われることになるでしょう。

・「正しい答えがない」ものについて、学校では教えてきませんでした。また学校には科目の壁があります。理科と社会の先生がお互いにしゃべる空間をつくれていませんので、理科と社会の先生がしゃべることのできる空間をつくっていくことが必要です。

・大学付属の中学校、高校もしくは中高一貫校の熱心な先生がいるところと連携できるといいと思います。

・小学校や中学校の教育を変えるには、学習指導要領を変える必要があります。学習指導要領を変えてその内容を実行するには、学校の先生を変える必要があり、そのためには大学の教員養成課程で教える教師を変える必要がありますが、それはかなりむずかしい。私自身、かつて大学の教員養成課程で教えた経験があり、日本の大学の教員養成課程がどういう空間なのかよく知っているのですが、教員養成課程で教える教師は、教科教育、教育学、理科/社会教育の3種類です。理科/社会教育で教えている教師は、本来であれば自分の研究をしたかったのであり、教員養成課程の教師として来たいと思っていないのです。またこの三者の間に交流はありません。

6. 教科書をつくる際に、ガイドラインの検討も同時に行ないたいと思います。何か、参考にすればと思われるガイドラインはございますか?

・そのようなガイドラインはありません。逆に、あったら知りたいので教えてほしい。

【ご紹介いただいた参考資料】
・鷲田清一監修、本間直樹・中岡成文編『ドキュメント臨床哲学』大阪大学出版会、2010年9月
・小林傳司『トランス・サイエンスの時代』NTT出版、2007年6月
・小林傳司「『参加』する市民は誰か」、『アステイオン』72(特集 なぜいま「市民力」か)2010年5月
・小林傳司「科学技術をめぐる『参加』の政治学」、筒井清忠編著『政治的リーダーと文化』千倉書房、2011年6月
・福島杏子、田中睦浩、若山恵美企画・編集『科学技術と社会の相互作用 平成22年度(2010年度)活動報告書』科学技術新興機構社会技術研究開発センター、2011年3月
・『日本からのメッセージ:地球温暖化を考える World Wide Views in Japan 〔記録集〕』①~⑤、World Wide Views in Japan 実行委員会、2010年9月
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by focusonrisk | 2011-09-15 22:53 | 聞き取り調査

北九州市環境ミュージアム館長 諸藤見代子さん

(特活)国際理解教育センター
日立環境財団プロジェクトチーム
聞き取り調査

実施日時 2011年8月11日
対象 北九州市環境ミュージアム館長 諸藤見代子さん
聞き取り調査者 角田季美枝、角田尚子、足立恵理

1. 現在の日本社会におけるリスクコミュニケーションについて、何が課題だと思われますか。

・伝える意識のある人の育成が必要です。伝える側のスキルアップ(情報収集力、伝達のスキル)です。
・また、情報を受け取る側も、冷静に判断できるスキルを身につけることが大事だと思います。恐怖にあおられ不安が大きくなると、どの情報を信じていいのか分からなくなってしまいます。様々な角度からの情報を収集、選択し、自分なりに分析する力を身に付けることも課題なのでは。
・情報の受け手が自ら判断できる多角的複眼志向の「モノサシ」をつくれるような環境教育の推進が求められています。

2. 特に3.11以降、活動への影響にはどのようなものがございますか?

・ミュージアムの展示には特に3.11を意識した展示を増やしていないのですが、講話などで東日本大震災の話をすると、聴いている方の目つきが変わることに気づきます。今までの自分の生活を見直そうと考えていらっしゃる方は確実に増えています。今後はエネルギー問題や暮らし方について、自分たちの生活の中やまちづくりの中でどのような取組みが出来るか考えていきたいと思っています。

3. 日本社会の状況に対して、貴団体・組織がめざす貢献は何ですか?

・環境ミュージアムにかかわって約10年の実感ですが、人は学べば変わります。
・北九州の公害の経験や市民の取り組みを次世代の子やアジアの人々に伝えていくことです。自分たちの住むところは、自分たちで環境を守るという姿勢を発信していきます。
・自分の街に誇りを持っていない世代は、自分の子ども達に北九州市の経験を伝えることが難しいようです。地域を愛する子どもをつくるために、これまでの取り組みをいかして学校の先生や地域・行政と連携して環境教育を進めていきたいと思っています。
・周りの人とコミュニケーションをとりながら、自分たちのくらし方、生き方について語りあえるような場を作っていきたいです。

4. これまでの貴団体・組織の実践から、学んだこと、今後に活かしたいことは何ですか?

・家族の健康を守りたいからこその環境の力・市民力が生まれました。製鉄所等からの煤煙公害について、感情に訴えるのではなく科学的論証がないと工場の人にわかってもらえないと戸畑の婦人会のメンバーは自らデーターをとり(シーツや菓子折りの空箱を使って煤塵による汚染を測定し記録をつけグラフ化)、工場や市役所の担当部署と交渉して、工場の集塵装置の設置をさせ大気環境の質の改善を進めてきました。市民の科学力というべき行動によって、企業や行政に「証拠」を見せていったことが改善につながっています。市民、企業、行政の争いではなく、話し合いにより街づくりを進めていきました。これらの取り組みがあって、現在、北九州市の環境首都、低炭素のスマートグリッドシティの実践になっています。環境のまちは一日にしてならず。長い時間と経験を通して人と人との関係つくり、仕組みつくりを行っていく大切さは今の時代にも生かされるのでは。相手の非をせめお金で解決するのではなく、技術の力で解決することを望んだ北九州市民の歴史は誇れると思います。
・戸畑の婦人会の活動の記録やあまり見ることが出来なかった公害記録映画「青空がほしい」を環境ミュージアムで展示しています。環境ミュージアムでは北九州の公害の経験や市民の取り組みをさまざまな展示(過去の汚染の実物展示、戸畑の婦人会の取り組みの活動紹介、ジオラマプラスナレーションのラジオラマ、九州の素材をつかった最新の環境技術を取り入れたエコハウス、公害の経験者も一緒につくったオリジナル学習プログラム、イベント、出前環境講座などや隣接する北九州イノベーションギャラリーとの見学連携)で伝えています。また、過去の公害を経験された方(企業、市民)が環境学習サポーターとして、見学に来られた方に、紙芝居、実験、クイズ、ゲーム、工作など、さまざまな方法で自分の経験や環境を守るメッセージを直接伝えています。
・地域で市民科学力を蓄積していくこと、公害を知らない世代に過去の経験をつなげていくこと、また、アジア各国にこの経験をつないでいくこと等を通じて、自らが環境汚染問題を解決するプロセスに参加することの重要性を伝えていきます。

5. 今回わたしたちが開発しようとしている教材および人材育成プログラムについて、ご提案などございますか。

・「見えない」放射性物質のリスクに関する教材やファシリテーションのスキルをアップするような教材をぜひ開発してください。

(注)上記は、角田季美枝が草案をまとめ、諸藤さんに確認、加筆修正いただいたものである。

【ご紹介いただいた参考資料】

・北九州市環境ミュージアム「北九州市環境ミュージアム」リーフレット
・北九州市環境ミュージアム「北九州市環境ミュージアム概略」
・「北九州エコハウス」リーフレット
・北九州市環境局「青い空を見上げて-北九州市環境学習サポーター体験紙芝居・物語」(小学校高学年用環境教育副読本、別冊公害克服編)北九州市、2006年3月
・北九州市教育委員会監修「3年生・4年生みどりのノート みんなで考えよう! みんなの地球」北九州市環境局、2010年3月
・中原婦人会『50周年 中原婦人会』2001年1月
・青空がほしい①②⑦「舞台再び」「朝日新聞」1993年11月23日ほか
・「女性市民運動による公害克服の歴史」(毛利昭子氏のお話のまとめ、文責:森本美鈴)
・山田真知子「洞海湾の環境改善 サクセスストーリーを担ったのは」(特集 瀬戸内海研究フォーラムin福岡)
・「北九州市エコツアーガイドブック 公害克服編~環境再生の道 そして世界の財産へ~」北九州市環境局環境首都政策課、2009年10月(3版)

【北九州市環境ミュージアム施設概要】
・開設:2002年4月オープン
・面積:敷地面積約4,100m2、延べ床面積約2,060m2
・総事業費:約20億円(用地費約5億円、建設費約10億円、展示施設約5億円)
・年間委託料:7366万6000円(平成23年度)※1
・主管課:北九州市環境局環境学習課
・指定管理者:タカミヤ・マリバー 里山を考える会 共同事業体
・利用者数:平成22年度111,919人(累計1,027,987人)※2
・インタープリタースタッフ:10人※3
・事務スタッフ:4人※3
・環境学習サポーター:68人(2011年9月13日現在)※1
※1 2011年9月13日、北九州市環境局環境学習課に電話で聞き取り。
※2 北九州市環境ミュージアムに対する「指定管理者の管理運営に対する評価シート(評価期間:平成22年4月1日~23年3月31日)」より
※3 北九州市環境ミュージアムウエブサイトより(2011年8月22日確認)
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by focusonrisk | 2011-09-13 17:03 | 聞き取り調査